ビザ申請は、似た条件に見えても結果や審査期間が同じになるとは限りません。ここでは、日々の入管実務で感じる「運」の要素と、予測不能なケースを少しでも減らすために私たちが重視していることを書きます。
入管業務をしていると、お客様から非常によく聞く言葉があります。
「私の友達は簡単にビザが取れました。しかも、そんなに時間もかかりませんでした。」
お気持ちはよく分かります。身近な友人が短期間で許可を受けていれば、「自分も同じくらい簡単に取れるのではないか」と思うのは自然なことです。
ただ、実務家の立場から申し上げると、この言葉を聞いたとき、少し困ってしまうことがあります。
なぜなら、在留資格の申請は、「友達が取れたから、自分も同じように取れる」という性質のものではないからです。
「友達は簡単に取れた」と言っていても、その友達が入管に何を提出したのかまで正確に把握しているケースは、ほとんどありません。
実際には相当な資料を提出していたかもしれません。会社側がしっかり準備していたのかもしれません。行政書士や会社担当者が、本人の知らないところで多くの説明資料を作っていた可能性もあります。
ですから、「友達は簡単でした」という話は参考にはなりますが、申請の難易度を判断する基準にはなりません。
少し意地悪な言い方をすれば、友達のビザが簡単に下りたことは、その友達にとっては良いことですが、あなたの参考になってくれません。
これが入管実務の現実です。
昔は簡単だったのに、なぜ最近は難しいのか
これも非常によく聞かれる質問です。
「昔はこんな資料はいらなかった。」「数年前は簡単に取れた。」「以前は同じような内容で許可されたのに、なぜ今回はこんなに厳しいのか。」
こうした疑問は、決して間違っていません。
実際、入管実務では、同じ在留資格であっても、時期によって求められる説明の程度や確認の重点が変化することがあります。
制度そのものが変わることもあります。審査運用が厳格化されることもあります。
以前はあまり確認されなかった事項について、現在は細かい資料を求められることもあります。
そのため、「以前できたから、今回もできる」とは限りません。
入管業務においては、過去の成功例は重要な参考資料ではありますが、永久に通用する「前例保証」ではありません。
特に外国人受入れに関する制度は、社会情勢、申請件数、不正事例、政策方針などの影響を受けやすい分野です。
昨日まで比較的スムーズだった申請が、数年後には詳細な説明を要求される。これは入管業務では珍しいことではありません。
「同じ案件なのに結果が違う」という問題
入管業務を長く扱っていると、「なぜこちらは許可されて、こちらは追加資料なのか。」と感じる案件に出会います。
もちろん、完全に同じ案件というものは存在しません。一見似ていても、細かな条件は必ず異なります。
それでも、同じ会社。似たような学歴。似たような仕事内容。ほぼ同時期の申請。
それなのに、一人はすぐに許可され、もう一人には追加資料が届く。
ある地方入管では問題にならなかった説明が、別の地方入管では詳しく確認される。
こうしたケースは実務上、確かに存在します。審査官によって着目するポイントが異なることもあります。
地方入管によって、申請件数や審査体制、運用の傾向に違いが生じる可能性もあります。
行政である以上、本来は可能な限り均一な判断が望ましいでしょう。
しかし、人が書類を確認し、人が判断する以上、すべての案件が完全に機械的、画一的に処理されるわけではありません。
ここに、申請人や行政書士が「運」と感じる部分があります。
行政書士でも、すべてを予測することはできない
行政書士に依頼すれば、必ず許可される。残念ながら、そのようなことはありません。
私たちができるのは、許可を決めることではなく、許可される可能性を下げる要因を一つずつ減らしていくことです。
入管業務を多く扱っていると、成功例だけではなく、失敗例にも出会います。
追加資料を求められた案件。想定以上に審査が長引いた案件。こちらが問題ないと考えていた部分を細かく確認された案件。残念ながら不許可になった案件。
こうした経験は、当然ながらその時点では苦しいものです。
しかし、専門家にとって重要なのは、その失敗を「運が悪かった」で終わらせないことです。
なぜ追加資料が来たのか。どこを疑われたのか。事前に説明できることはなかったのか。書類の見せ方に改善できる部分はなかったのか。次に似た案件が来たとき、何を追加すればリスクを減らせるのか。
一つ一つ検証していく必要があります。
私たちは、許可された案件だけを経験とは考えていません。むしろ、難しかった案件や失敗した案件こそ、非常に重要な実務経験です。
成功例だけを見ていると、「このパターンなら大丈夫」と思い込みやすくなります。
失敗例を経験して初めて、「ここも入管は見る可能性がある。」「この説明だけでは足りない場合がある。」「この条件では、念のためこの資料も付けた方がいい。」という判断ができるようになります。
「予測不能」をゼロにはできない。でも、減らすことはできる
入管審査を100%予測することは、行政書士にもできません。
どれだけ経験を積んでも、「この案件で、まさかそこを聞かれるとは思わなかった。」ということはあります。
しかし、経験を積むことによって、その「まさか」を減らすことはできます。
過去の許可例だけを見るのではなく、不許可例、追加資料例、長期審査例も蓄積する。
制度改正を見る。最近どの部分が厳しく確認されているのかを見る。
同じ在留資格でも、会社規模、業種、申請人の経歴によって説明方法を変える。
そうすることで、行政書士でも予測できないケースを、少しずつ減らしていくことができます。
入管業務に必要なのは「絶対大丈夫」という言葉ではない
お客様にとって一番聞きたい言葉は、「大丈夫です。絶対取れます。」かもしれません。
しかし、私たちは、その言葉を簡単に使うべきではないと考えています。
入管業務には、制度変更があります。運用変更があります。審査官による判断があります。地方入管による違いを感じる場面もあります。予想外の追加資料もあります。
そして、ときには実務家でも理由を完全には説明できない結果があります。
だからこそ必要なのは、根拠のない「大丈夫」ではありません。
過去の成功と失敗の両方を使い、できる限り予測不能な要素を減らすこと。
それが入管業務に携わる行政書士の仕事だと考えています。
三王行政書士法人では、多くの申請案件を扱う中で得た成功例だけではなく、難航した案件、追加資料となった案件、不許可となった案件についても、大切な実務経験として蓄積しています。
入管業務には、どうしても「運」と感じる部分があります。
しかし、最後を運任せにしないために、できる準備はすべて行う。
それが私たちの基本姿勢です。
