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技人国・就労ビザ

日本の就労ビザは「技術移民」と何が違うのか
――カナダ・豪州・ドイツ・英国と比較して見える、日本の制度構造

「日本で働きたい。学歴も職歴もあるので、まず就労ビザを取り、日本に入ってから仕事を探したい」――海外からよく寄せられる相談です。

この発想は、カナダやオーストラリアなどの技能移民制度を知っている方には自然です。しかし、日本の一般的な就労在留資格、とりわけ「技術・人文知識・国際業務」は、制度の入口がかなり異なります。

日本の一般的な就労ビザは、「本人の能力だけを先に審査して、移住資格を与える」仕組みではありません。原則として、日本で何をするのか、どの企業・機関が受け入れるのかという具体的な活動が先にあります。

一方、カナダやオーストラリアには、特定の雇用主との契約を必須としない技能移民ルートがあります。ドイツには一定の要件を満たす人が求職目的で入国できる制度があり、英国は日本と同様にスポンサー企業との具体的な仕事を強く求めます。

「日本は移民国家ではない」という言葉を、実務ではどう読むか

「移民国家」は入管法上の正式な法律用語ではありません。日本政府はこれまで、一定規模の外国人とその家族を期限を設けず受け入れるという意味での「いわゆる移民政策」を採る考えはない、と説明してきました。

ただし、これは「外国人を受け入れない」という意味ではありません。日本には「技術・人文知識・国際業務」「高度専門職」「企業内転勤」「特定技能」「経営・管理」など、多数の在留資格があります。制度の特徴は、人そのものに包括的な移民資格を与えるというより、日本で行う活動ごとに在留資格を分けている点にあります。

まず比較すると、日本の位置が分かりやすい

国・制度の例特定の雇用主が先に必要かポイント・招待型先に入国して求職する仕組み制度の特徴
日本
技人国
原則必要。日本の公私の機関との契約に基づく活動通常の技人国自体はポイント制ではない原則として想定されない「受入先+具体的職務」から審査が始まる
日本
高度専門職
高度専門・技術活動等では日本の機関との契約等が前提あり一般的な求職ビザではない就労活動の枠組みの上にポイント評価を重ねる
カナダ
Express Entry
Federal Skilled Worker Programでは必須ではないあり。候補者をプールし、招待を受けて永住申請制度の中心は永住候補者の選抜本人の学歴・職歴・語学力等を広く評価
オーストラリア
SkillSelect / 189等
Skilled Independent (189) は雇用主スポンサーを前提としないあり。EOI・ポイント・招待「先に求職入国」とは別の仕組み技能移民として永住系ルートが明確
ドイツ
Opportunity Card
申請時点で雇用先がなくても利用可能な類型あり資格認定またはポイント要件あり。原則最長1年間の求職滞在一定の専門人材に、現地求職のための在留機会を与える
英国
Skilled Worker
必要。認可スポンサーからのジョブオファー等が前提「points-based」と呼ばれるが雇用主スポンサーが中核Skilled Worker自体は不可日本に比較的近い「仕事・スポンサー先行型」

※上表は制度の大きな違いを理解するための概略です。各制度には職種、年齢、語学、資金、資格認定、州・地域推薦等の個別要件があります。2026年9月24日時点。

カナダ――「就職先が決まっていない=入口に立てない」ではない

カナダのExpress Entryは、技能労働者向けの永住申請を管理するオンライン制度です。Federal Skilled Worker Programでは、有効なジョブオファーは申請資格として必須ではありません。候補者はプロフィールを作成してプールに入り、学歴、職歴、語学力などを含む評価を受け、招待を受けた場合に永住申請へ進みます。

ここが日本との大きな違いです。日本の技人国では、本人が高学歴・高経験であるだけでは足りず、原則として「日本のどの機関と契約し、何の専門業務を行うのか」が先に必要です。

オーストラリア――技能移民を独立したルートとして設計

オーストラリアのSkillSelectでは、Skilled Independent (subclass 189)、Skilled Nominated (190)、Skilled Work Regional (491) などについてExpression of Interest(EOI)を提出し、招待を受けて申請する仕組みがあります。189は名称どおり独立技能移民で、特定の雇用主によるスポンサーを前提としません。

EOIでは英語力、学歴、職歴、年齢などが点数化され、最低基準を満たしても招待が保証されるわけではありません。それでも、制度の出発点が「この会社でこの仕事をする」という個別雇用契約だけではない点で、日本とは構造が異なります。

ドイツ――仕事が決まる前に、求職のための在留を認める

ドイツのOpportunity Card(Chancenkarte)は、一定の資格やポイント要件を満たす人が、ドイツ国内で適格な仕事を探すために滞在できる制度です。初回の求職用Opportunity Cardは原則最長1年間で、求職中の一定範囲のパートタイム就労や試用就労も認められています。

つまり、「まず現地に入り、一定期間仕事を探す」という制度目的が正面から設計されています。日本にもJ-Findという求職・起業準備型の制度がありますが、対象大学などの要件が限定されており、一般的な就労ビザ全体の仕組みではありません。

英国――むしろ日本に近い部分がある

他方、すべての先進国がカナダやオーストラリア型ではありません。英国のSkilled Worker visaでは、Home Officeの認可を受けた雇用主からのジョブオファーとCertificate of Sponsorshipが必要です。

その意味では、英国の主な雇用型ルートは、「受入企業と具体的職務が先にあり、その仕事を前提として在留資格を申請する」という点で、日本の技人国に比較的近い構造です。各国を比較すると、単純な「日本=雇用先必要、海外=技術移民」という二分法では整理できないことが分かります。

日本の技人国――審査対象は「人」だけではなく「仕事との組合せ」

「技術・人文知識・国際業務」は、出入国在留管理庁の説明上、「本邦の公私の機関との契約に基づいて行う」専門的な活動です。契約は必ずしも雇用契約だけに限られませんが、実務では受入機関、具体的な職務、報酬、本人の学歴・職歴との関連性、会社の事業実態などを一体として説明します。

日本の技人国で考える順序

「私は優秀だから日本に移住できるか」ではなく、「日本のこの会社・機関で、この専門業務を行う。その活動は技人国に該当し、本人の学歴・職歴も要件を満たすか」という順序で考えるのが実務に近いです。

日本にもポイント制はあるが、カナダ・豪州と同じではない

日本の高度人材ポイント制は、学歴、職歴、年収、研究実績などを点数化します。しかし出入国在留管理庁は、まず就労の在留資格に関する要件を満たす者の中から高度外国人材を認定する仕組みと説明しています。

高度専門職1号ロも、日本の公私の機関との契約に基づく高度専門・技術活動が前提です。したがって、「70点以上なら、勤務先がなくても日本へ技術移民できる」という理解は正確ではありません。

例外としてのJ-Find――日本にも「先に来て探す」は存在する

日本にも、先に来日して就職活動を行える制度があります。J-Find(未来創造人材制度)は、対象となる海外大学等を卒業した者が要件を満たす場合、日本で就職活動または起業準備活動を行うため、最長2年間在留できる制度です。

したがって、「日本には求職型制度が一切ない」わけではありません。ただしJ-Findは対象者が限定された特別制度であり、一般的な技人国の入口とは異なります。

海外から「日本へ技術移民したい」と相談されたときの確認事項

実務では、最初に「技術移民」という言葉の意味を分解する必要があります。

  • 日本企業への就職を希望しているのか
  • まだ就職先がなく、日本で求職したいのか
  • 高度専門職のポイントを想定しているのか
  • J-Findの対象となる可能性があるのか
  • 起業を予定しており、経営・管理等を想定しているのか
  • 最終的な目的が就労なのか、永住なのか

この整理をせず、「学歴があります」「10年の職歴があります」「英語ができます」という本人側の属性だけで就労ビザの可否を判断すると、日本の制度を誤解しやすくなります。

実務上の結論

日本の典型的な雇用型就労ビザでは、本人の能力評価より先に、日本での受入れ先と具体的な仕事内容を確定させる必要があります。カナダやオーストラリアの技能移民、ドイツの求職型制度とはこの入口が異なります。一方、英国のように日本と近いスポンサー型制度を採る国もあります。

参考資料

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